”知らないと気づけない失敗”がマネジメントにはあります。気づけない失敗なので、私は”罠”と言っています。
僕もマネジメントを何年やっていても、何回も失敗してしまいます。その代表的なものを5つ紹介しています。少し気をつければ解決できることことばかりなのですが、それがなかなか継続できていないです。
4月に昇進して、初めて部下をもち、マネジメントする側になった方もいるでしょう。昇進おめでとうございます。ようこそ”マネジメントの世界”へ!
やる気、責任感があふれ、もっと昇進したい!この調子でいっきに昇進しつづけてやるぞ!と思っているなら、先に失敗しまくっている先輩の悪い例として、ぜひ読んでもらいたいです。
簡単に実践できるばかりなので、きっと早く昇進することができるでしょう。
目次
リーダーの役割はなにか?
なぜ、会社は階層を作っているのか?を理解していますか?
社長→取締役→執行役員→部長→課長→係長→平社員
最近は部長をマネージャーと言ったり、課長をリーダーと言ったり、している会社もあり、役職の名前や定義が少しずつ変わってきています。でも、なぜ?こんな風になっているかを考えたことはありますか?
答えは簡単で社長が全員を教育したり、指導したりはできないからなんです。
つまり、権限委譲をして、社長の替わりに社員を育てたり、売上をあげるために、階層制度になっています。会社によって、リーダーが持っている権限は違うと思いますが、リーダーに期待されている「3つの役割」はだいたい同じです。
リーダーに期待されている3つの役割
- メンバーの教育
- メンバーのモチベーション管理
- 現場の状況をマネージャーに報告
この3つはどこの会社でも役割として当たり前にマネジメント側にあるとされていると思います。3つともうまくできてますか?できている!方は、この先は読まなくて大丈夫かと思います。ちょっと不安かも、という方は一応読んでいただいて、できているか確認をしてみてください。
第1の罠:完璧主義者になってしまう
- メンバーを教育しないといけない!
- モチベーションをあげないといけない!
- 自分が見本にならなければいけない!
- 結果を出さないといけない!
- 早くマネージャーになりたい!
なにひとつ間違っていないですし、そう思っているあなたは「責任感」が強いタイプであることがわかります。だからこそ、リーダーに昇進できだのでしょう。
上記の5項目を満たすために、おちいりがちなのが、1つ目の罠「完璧主義者になってしまう」です。全部完璧にできるに越したことはないですし、きっとあなたはできるでしょう。でも、「5つの項目を完璧」にこなすことと「完璧主義」は別ものです。
メンバーよりも全てにおいて優れているリーダーももちろんいると思いますが、全てにおいて優れている必要はまったくないです。それを目指すことはちょっと意味があるかもしれないですけど、全てにおいてメンバーより優れていなくても問題はありません。
新人リーダーは先月までメンバーだった人です。つまりメンバーと同じ完璧ではない状態。それがいきなり今月になったら、完璧になるなんて、無理です。理想のリーダー像=完璧主義 と思ってしまうと行き詰まってしまいます。
どうしてか?というと、「弱み」が見せなくなってしまうからです。
なぜ?弱みを見せないとけいないのか?
リーダーは完璧な方がいいに決まってるじゃないか?と思っているとそういう発想になってしまいます。「弱み」を見せる必要はない!と思ってしまいます。
完璧なリーダーには誰も相談も報告にも行かないです。メンバーは未完成なので、完璧な人に相談すると、叱られるし、ダメと思われる。それなら完璧になるまでやってから、報告しよう。そう考えてしまう人が多いです。
結局、報告なんてこないです。完璧になることなんてないからです。
メンバーが恐れていることはなんでしょうか?先月までの自分を思い出してみてください。おそらくこんな感じではないですか?
- 仕事ができない。と思われたくない
- 評価を下げたくない、評価をあげたい
- 怒られたくない
- 周りのメンバーより優秀と思われたい
これらのメンバーの心理には共通していることがあります。
「失敗したくない」
失敗すると・・・
仕事ができないと思われる
失敗すると・・・
評価が下がる
失敗すると・・・
怒られる
失敗すると・・・
周りのメンバーよりできないとおもわれる
メンバーの心理の根底は「失敗したくない」なんです。
でも、当然ですが、ほとんどのメンバーは失敗します。
上司が完璧主義だと、「失敗は絶対に許されない」とメンバーは考えてしまいます。それによってこんな弊害が出てしまいます。
- 虚偽の報告・・・本当の原因とは違うことを原因にする(自己保身)
- 報告がない・・・失敗していることを隠蔽する
- 事前の相談がない・・・失敗するかもと思っても、相談しない
「完璧主義者」のリーダーは原因究明をして、対策をたて、実行します。でも、報告自体が嘘なんで、嘘の原因に対策を立てることになってしまい、その対策はまったくといっていいほど、的外れになってしまいます。
リーダーは的外れと思っていないので、対策を徹底しようとします。でもメンバーは的外れと気づいているので、徹底している振りだけします。本当の原因に気づいていないのはリーダーだけになります。
いつのまにか「裸の王様」になってしまうのです。
プライベートのことでも、仕事のことでもなんでもいいです。自分の「弱み」をメンバーに共有しましょう。あらたまって、会議を開いて伝える必要はないです。会話の中で、ちょっと失敗したことや、苦手なことを笑える感じに話すだけでいいです。
リーダーである自分も「失敗する」「苦手なこともある」と見せることで、メンバーも安心して見せてくれます。そうすると本当の報告や事前の相談が入るので、正しい対策が打てるようになります。
これで一つ、優秀なリーダーに近づくことができます。
第2の罠:ネガティブな言葉が先走る
プラスの話とマイナスの話をする時にどちらから、話すのが正解なのでしょうか?次の例えで確認してみましょう。
メンバーから、指示していた仕事を完了しました。と報告を受けました。確認してみると指示した内容と違うところがいくつもあります。むしろ指示とち月ところの方が多い・・・。
あなたは、「ザラシさん」と「タメブタくん」、どちらの話し方をしていますか?
ザラシさん
なにを聞いてたの?
ちゃんと理解してた?
理解してないなら、聞きに来ればいいじゃん!
もう一回やり直して。
ちゃんと伝えられてないこっちも悪いね。ごめん。
対応してくれてありがとう。
タメブタくん
でも、指示した内容と全然違うね。
ちゃんと伝えられてなくてごめんね。
時間使ってもらったのに申し訳ない。
どういう指示だったか覚えてる?
もう一回説明するね。
もし、わからないところがあったら、すぐに聞いて。
OK?じゃぁ、やり直して。
さぁ、ゴマフアザラシの「ザラシさん」と貯金大好き「タメブタくん」どちらもやり直しをお願いしています。再度指示をしている。という意味では同じです。
どちらの言い方が、メンバーが気持ちよく、働き、指示通りの仕事をしてくれると思いますか?ほとんどの人が「タメブタくん」と答えるでしょう。
Yes But法は、いいことを先に伝えてから、悪いところを指摘する話し方です。
心理学的にこの話し方の方が、伝わりやすく、また、結果も伴うことが学術的にも証明されている話法です。マネジメントの基本中の基本の話法です。
知っている人や、聞いたことがある人も多いでしょう。こういう時に使います。上司に報告に行くときも、YesBut法で報告すると、上司の口調が和らぐので、試してみてください。
詳しくはこの本のP52記載があります。
でも、なかなかできないですよね。その原因は次の罠にあります。
第3の罠:役割と恩義を混同してしまう
この罠は、多くの人がかかってしまいます。そして、どんどん罠にハマっていきます。なぜか?リーダーがいい人だからです。だから、この罠は厄介なんです。
おさらい、リーダーの3つの役割はこれです
- メンバーの教育
- メンバーのモチベーション管理
- 現場の状況をマネージャーに報告
役割に「教育」と「モチベーション管理」がありますね?リーダーの役割として当然のことです。でも、教育と管理となると、なぜか「教育してあげてる」「こんなに考えてあげてる」と、メンバーに「恩」を感じてほしくなってしまいます。
役割を果たしているだけなのに、まるで、ボランティアをしているかのように、リーダーである自分は「献身的」にメンバーの教育とモチベーションのことを考えてあげてるよ!
つまり、メンバーの今と未来を考えて「あげてる」になってしまうのです。
勝手に恩を感じてほしいと思っているだけなら、全然問題ないです。でも、恩返しをしてほしいと、思ってしまうのが人の性です。多かれ少なかれ。
「教えてあげてる」「考えてあげてる」ことへの見返りがほしくなっているのです。見返りってなんのこと?と思いますよね?
リーダーは「教育している」見返りに、期待に応えてほしいんです。だって自分はたくさん「教えてあげてる」「考えてあげてる」から、少しでも期待に応えてほしいんです。
恩返しと期待に応えることの違いは、すごくシンプルです。
恩返しの場合は、「恩返ししてください」と言わない、「恩返しはされない」
と思うことが美徳とされてます。
期待の場合は、「期待している」と言って伝えた上で、「期待に応えてくれる」
と思うことが美徳とされています。
気づきましたか?恩は返してもらえないと思っているけど、期待は応えてもらえる。期待にこたえてもらいたい!と思ってしまうのです。
では、期待することは悪なのでしょうか?
期待することは決して、悪ではありません。もちろん期待していることは伝えた方がよいです。ただ、期待に応えてくれると「信じすぎる」ことがいけないです。
恩返しと同じように「期待に応えてくれたらラッキー」と軽く思う程度でいいのです。自分で期待値を調整しないといけません。
給与を全くもらわずに、リーダーとしてメンバーに接している人はいないでしょう。リーダーとして役割をまっとうしてもらうことで給与が支払われます。
会社は、メンバーに恩を感じてもらうために、「教育」と「モチベーション管理」をやってくれとは言ってない。そもそも、恩を感じてもらおうと思ってしまうことが間違っていて、ただ「役割を果たしているだけ」なのです。
第4の罠:一事が万事と考えてしまう
「一事が万事」という言葉がありますが、あれは人の育成には向いていない言葉です。一つのミスをまるで「当人のすべて」がダメだと決めつけてしまいます。
そして、マネジメントをしていると「一事が万事」と言いたくなる場面は幾度となく出てきます。でも、それをリーダーのあなたが言ってしまったら、終わりです。挽回のチャンスを潰しているのと同じです。
ミス、失敗の原因を究明する時に、「一事が万事」と思っていると、ミスや失敗の原因とはあまり関係がないのに、ちょっとでもその原因と類似している別のことも否定してしまいます。
人を育てる立場の人間が絶対にやってはいけないことです。なぜか?できない、ダメだというレッテルを貼ることになるからです。
第一印象は覆すのが難しいと言われていますが、組織の中で貼られたレッテルも覆すのは難しいです。なぜか?レッテルを剥がす基準がバラバラだからです。組織のメンバー全体から、レッテルが貼られていると、一人が剥がしたとしても、まだ俺は認めてないという人はいる。いつまで経ってもレッテルは誰かに貼られたままになります。
悪いレッテルが貼られている環境はスポーツでいうと、AWAYゲームです。敵地で試合してるようなもので、本当のパフォーマンスが出せません。だから、失敗しやすい状態になってしまいます。失敗してしまう。失敗を繰り返しやすくなり、レッテルがどんどん濃くなってしまいます。
参考:職場のホームとアウェイについて書いた記事はこちら
マネジメントの役割、成果がでる職場にする5つのポイント【3分でわかるマネジメント初級】
第5の罠:自分がメンバーの時のレベルを「普通」にしてしまう
メンバーの仕事ぶりや、対応を見て、「普通」そんなことしないだろう?と思ったことはあるでしょうか?
「普通」という感覚はなにを基準にしていますか?
その「普通」の基準がきちんと会社で「普通」とはこれだ!と決まっている定義がありますか?
多くのリーダーは昔の自分を「普通」と言ってしまっています。
過去の自分が「普通」の基準としてしまってもいいです。でも、過去の自分の「普通」は基準としてはかなり高くなっていると認識してください。
なぜか?
あなたが優秀だからです。
現に今リーダーになって、メンバーを任せてもらっている。それはあなたがメンバーより努力し、結果をだし、評価され、勝ち取ったものだと思います。
それを「普通」と言ってしまうと、メンバーの基準の「普通」はあなたの「普通」と比べると相対的に低いです。つまり、あなたからするとメンバー基準の「普通」は全部あなた基準の「普通」からすると「普通」じゃない可能性があります。
もし、あなたと同じ「普通の基準」でメンバーが仕事ができるなら、あなたと同じポジションのリーダーに全員がなれてしまいます。そんなことはありえないです?メンバーが1人とか2人を見ているのであれば、ありえるかもしれませんが、3人以上のマネジメントをしていて、短い期間で全員をリーダーにすることは非常に困難で現実的ではないです。
では、どうすればいいのか?
あなたのチーム独自の「普通」の基準を決めてしまいましょう。最初は3つくらいでスタートがいいでしょう。その3つができるメンバーが増えてきたら、4つ5つと増やせばいいです。
最初から3つともできているメンバーが居るなら、あなたの「普通」をすべて書いて、全部できるかやって貰えばいいです。
世の中いろんなマネジメント手法があります。でも、どれも答えではありません。あなたと同じ時代に同じ環境で同じメンバーをマネジメントしている訳ではないからです。
でも、人間の心理は解明されているパターンがあります。それは普遍的な真理と言ってもいいでしょう。それはどんどん活用しましょう。この5つの罠はそれに近いです。
マネジメントの最終的な判断基準は、リーダーが困った時に「助けてくれ」と言って、メンバーはどれくらい本気で「助けて」くれるか?だと思います。
リーダーが考えないといけないことは「どうすれば信頼されるか」だけでいいんです。その為には、メンバーをよく見て、よく知って、能力を発揮できる環境を用意し、称賛し、時には事実を指摘する必要もあります。本音を話すことも、弱みを見せることも必要かもしれません。
リーダーは常にGIVE!GIVE!GIVE!で与え続けていくことが役割であり、仕事です。きっといつか、どこかで、だれかが、なにかを少し「お返し」してくれたら、超ラッキーだなと思いましょう。リーダーはひたすら期待しないで、GIVEを続けましょう。